寿司シェフへの道2

in #partiko6 years ago (edited)


オーナーのミセスがチップを横領してしまうため、腕のよい寿司シェフがいっきに2人辞めてしまい、ウェイトレスの私が寿司を握る事になり、トレーニングが開始しました。

寿司を教えてくれるのは日本の寿司屋でも働いていた、きれいなお寿司を握られるベテランの職人さんです。
「じゃまずマグロからいってみよう」
えっ!?最初からマグロ切ってよいの?マグロって一番高いから、日本だったら、何年も修行を積んでやっと最後に触らせてもらえる魚だったような気がしたけど?
「失敗したら、スパイシーツナ用に引っ掻いちゃえばいいからどんだけ失敗しても構わないよ。重いから落とさないようにね。」と、どーんと大きなマグロの切り身を渡されました。
え~!?ほんとに〜?日本だったら間違った切り方したら度叱られますよね〜?
なんだか女の自分が、寿司職人になるのも夢にも思っていなかったし、全てが狐につままれているかのようにトレーニングが始まりました。

鮪に続いて、サーモン、鯵、鯖など魚の捌き方から、ロールの巻き方、握り、シャリの合わせ方まで、日本の寿司屋だったら嘘のようなスピードで教えて頂き、一ヶ月もたった頃には、全てなんとなく形になって、オーダーも全部ひとりでこなせるようにになっていました。もちろん、本物の日本の寿司職人の方が見たら、私の寿司なんてとても認めてもらえないでしょうが、アメリカでは合格ライン。

もうひとりのタイガーさんという元プロレスラーだった寿司職人の方は、おにぎりのようなお寿司を握っておられ、それでもお客様から喜ばれてましたから、私のなんちゃって寿司でも大丈夫。女性の寿司シェフはあまり見かけないからといって、それだけで喜んでくれるお客さんも大勢みえました。

昔、ホリエモンさんが「日本の寿司職人が何年も修行するのはバカだ」んと言って波紋を呼んだ事がありましたが、バカとは言わずともある意味正しいかも。寿司学校に3ヶ月通っただけでミシュランになったお店の話も聞いた事がありますが、伝統的なやり方も大切ですが、効率的な仕事の覚え方ってあるはずです。今の時代、意地悪な先輩から仕打ちを受けながらゴマまですって教えもらわなくても、魚の捌き方だって何だってYouTubeで動画も見れるし、覚えたいことは、何でも検索すれば全部わかりますから。
意欲と体力があれば成し遂げられないことはないと思います。

ここでは『飯炊き3年握り8年』なんて途方の暮れる話もないですし、日本だと女性は男性より手の温度が高いから女が握るとネタが腐る、月に一回の女性の周期があるため味覚が不安定でプロフェッショナルでない、化粧や長い髪がダメだだの、日本人は平気で女が握った寿司なんて食えないなんて言ってきますが、そんな発言をアメリカでしたらすぐ訴えられてしまいますので、そんな男女差別を受ける事もありません。

実際、私は冷え性で死人のように手が冷たいし、もし温かったとしてもネタを触る時間など10秒もかからないので、それで魚が傷むわけもなく、女性が不安定といいますが、ちょっと忙しくなっただけでテンパって大声を張り上げる和食シェフの気性の激しさや、ちょっと疲れただけで妙に塩味がきつくなったり、味が濃くなっている不安定な男性のシェフの方もよくおみかけしします。女性の化粧臭や髪が料理に良くないと言いますが、おっさん臭やひげ、腕毛の方が私には不潔に思えます。長い髪をきちんと束ねている女性より、抜け毛の時期に差し掛かっている男性の髪のが落ちやすくて料理に混入しやすいと思うけれど。

アメリカの有名グルメ誌は、オバマ元大統領も来店して大量に食べ残したという有名店、ミシュラン三ツ星の寿司屋の方が「女性の方が手のひらの体温が高く、ネタを痛める」と発言した事に「ridiculous(ばかげてる)」と言って「世界の料理界と較べて、寿司の世界がいかに情けないほど性の平等において遅れているかを示す」と批判しています。寿司に始まり、日本料理が世界に認められてきている中、残念に思います。

日本でずっとキッチンで働いてきて、嫌という程味わったけれど、女の私はどんなに経験があろうがなかろうが、どこの職場でもまず、サラダ場とデザートからスタート。一方、男の新人君は和食だったらいきなり刺し場からとか、イタリアンだったら、パスタ場やメインディッシュからの花場からスタートです。そのくせ、女だからといって容赦なく、重たいものは普通に運ぶよう言われます。仕事は標準男性以上でないと認めてもらえません。同等な仕事をしていたら、あいつはやっぱり女だからダメだって言われてしまいます。どんな仕事も周りの人より早く気づいて、パッと済まさないと次の仕事すらもらえません。

アメリカに来て、男女平等に扱ってもらえるのに正直驚きました。女性の方が優遇されているように思える程です。

話がズレましたが、アメリカ式寿司トレーニングで、失敗を恐れずどんどん握れの回転寿司屋で、私は腱鞘炎になるほど毎日寿司を握り続け、自分で言うのもなんですが、どんどん上達していきました。

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