Storj には、ディスク容量の借主(データオーナー)と貸主(ファーマー)、そしてそれらを繋ぐブリッジからなり、貸し借りのコントラクトをブロックチェーンに保存する Storj ネットワークと、ブリッジの1実装であり Storj Labs 社が運営する Storj サービスの2種類があります。
Storj サービスは、今のところ Storj ネットワークで実現可能なことの一部のみを使っているため、この二つは分けて考えないと、よく分からないことになります。
Storj ネットワークには、前述のようにデータオーナーとファーマー、そしてブリッジという三つのステークホルダーが関係しています。概念上、データオーナーは保存したいデータサイズと料金などの条件を元にファーマーを探し、コントラクトを結ぶことでデータを預けることができます。
しかし、実際はブリッジにウォレットの管理から適切なファーマー探し、コントラクトの終結までほとんど委任しているようです。つまり、ブリッジがオンラインウォレットのような働きをしていて、データオーナーのパソコン上にあるクライアントは、保存前にデータを暗号化することくらいしか行っていません。
そして、現状提供されているブリッジが Storj サービスのみとなっています(プライベートネットワークではその他のブリッジも存在するとは思います)。GitHub にある Storj クライアント libstorj や FileZilla は Storj ネットワークではなく Storj サービスのクライアントです。これらのクライアントを使って Storj ネットワークにデータを保存する場合、コントラクトはこの Storj サービスが結んでいます(そのおかげで初回12ヶ月は25GB無料のようなサービスが提供されています)。
つまり、何をするにも Storj サービス任せという状態であり、本当の意味で分散ネットワークサービスにはまだなっていません。例えば、Storj サービスに不具合が出たらデータは取り出せません。
そのため、ここだけ見ると、Storj は中央集権的なプロジェクトに見えてしまう可能性がありますが、ブリッジの1実装として比較的簡単にサービスインできる中央集権的なブリッジを最初に作ったというだけでネットワークとしてのポテンシャルはまた別の話だということです。
逆に考えると、中央集権的なものでも分散的なものでも、新しいアイデアを元にオリジナルのブリッジを開発できれば Storj ネットワーク上で独自の料金体系のストレージサービスを提供することも可能だと言えます。アイデアのある方は挑戦してみてはいかがでしょうか?
まとめると Storj という言葉は、ネットワークの仕組みを指す場合と運用中のサービスを指す場合の二種類あります。プロジェクトのポテンシャルを見るためにはネットワークの方を指している Storj について調べる必要があります。(なおディスク容量を貸し出す場合は多分サービスの方の Storj です。)