いつの世にも、悪は絶えない。その頃、徳川幕府は火付盗賊改方という特別警察を設けていた。凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まるためである。独自の機動性を与えられた、この火付盗賊改方の長官こそが、長谷川平蔵、人呼んで『鬼の平蔵』である。(『鬼平犯科帳』オープニングナレーション)
鬼平めしシリーズの第1弾は、第4シリーズ第4話『正月四日の客』に出てくる「真田そば」です。鬼平めしシリーズについては、「鬼平めし00 プロローグ」をご覧ください。
『正月四日の客』のあらすじ:
平蔵(中村吉右衛門)の若かりし頃、長谷川家の屋敷に奉公していた女、おこう(山田五十鈴)が夫と営む蕎麦屋「さなだや」は、毎年正月四日には「真田そば」というそばしか出さない。おこうは信州の生まれで、幼いころ盗賊に両親を殺されたのだが、その命日が正月四日だったのである。そんな「さなだや」に、ある年の正月四日、「真田そば」を食べさせてほしいという男(河原崎長一郎)がやってくる。その男も信州の出であるらしく、江戸で「真田そば」を食べられたことに感激して、来年もまた来ると言い残して去る。翌年、約束通り正月四日にやってきたその男の人柄に、おこうは親しみを感じるようになっていた。だが、その男は自分の身元については語ろうとしない。実はその男は盗賊「亀の小五郎」なのだった。そんな折、何も知らぬおこうは平蔵から「亀の小五郎」の手下の男の探索への協力を頼まれたのだが・・・
さて、この「真田そば」ですが、どういうそばなんでしょうか。故河原崎長一郎さん演じる「亀の小五郎」のセリフを聞いてみます。
このつゆの味がなんとも言えぬ。・・・上田から松代あたりの山間でとれるねずみ大根をすりおろし、絞り汁をそばつゆにたっぷりと合わせるのだが、・・・この味を江戸で口にできようとは・・・
なるほど、「ねずみ大根」という大根をすりおろして、その絞り汁をつゆに入れるのだというのはわかりました。でも、肝心のそばがどんなそばなのかについては説明がありません。ただ、映像を見ると、短くてぼそぼそしているのがわかります。
もう少し詳しい説明を得るために、原作にも目を通してみることにします。ちなみに、この『正月四日の客』の原作は小説『鬼平犯科帳』の中にはありません。原作は『にっぽん怪盗伝』という短編集の中に収められています。では、その原作の『正月四日の客』を読んでみましょう。
「なにをまた粋狂に、あんなものを出すのだ。舌がひんまがるような辛い汁で、そばの味もなにもあったものじゃない」常客も閉口し、この日だけは店へやって来ないようになった。
また、麺については、こんな記述があります。
ふだんとはちがう、くろぐろと光った武骨な手打ちそばのもりをのせた膳を見て、客の表情が一変した。
原作でも、そばの説明は、こんな程度です。情報が少ないですが、一番の特徴は「ねずみ大根」をすりおろした絞り汁をつゆに合わせて「舌がひんまがる」ほど辛くすることのようです。そばのほうは、黒々してボソボソした、いわゆる田舎そばのようですね。
うーん、これは材料をそろえるのも難しそうです。長野県のAコープあたりではねずみ大根を売っているようですが・・・。というわけで、本物の真田そばは作れそうにないので、あきらめて「真田そばっぽいもの」を作ることにしました。
そばは、スーパーで売っている普通のゆでそばで間に合わせましょう。
ボソボソ感を出すために、あえて短く刻み、さらに電子レンジで少し加熱して水分を飛ばしてみました。いい具合にボソボソになったように思えます(変な調理・・・)。
次は大根おろしです。ねずみ大根が手に入らないので普通の大根を使いますが、せめて最大限辛くなるように、先端部分を使用し、荒っぽくすりおろしました。
そして、この大根おろしから、汁を絞り出します。
これにそばつゆを混ぜます。
これで一応、早くも完成。個人的には、他の薬味もつけたいところですが、ドラマを見ると薬味はついていなかったので、それに従います。
それで、味はどうかというと、・・・確かに辛いですが、「舌がひんまがる」にはほど遠く物足りません。そこで、汁を絞ったあとの大根おろしをいくらか、つゆに入れてみました。すると、辛さがだいぶ強くなって、それらしくなってきましたが、やはり「舌がひんまがる」までは行きません。普通の大根ではこの辺が限界なのでしょう。これ以上辛くするには、ねずみ大根が必要なのかもしれません。僕は辛いのが好きなので、ねずみ大根を味わってみたくなりました。
第一弾にもかかわらず、すごく中途半端なものになってしまいました・・・。結局、大根をすりおろしただけじゃないかと言われれば、返す言葉もありません。今回は最初ですし、肩慣らしということで許してください。このシリーズは、僕が少しずつ料理を覚えていく企画だと思って、温かく見守っていただけると幸いです。真田そばにはいずれ再チャレンジするつもりです。ねずみ大根を手に入れたら、今度こそ、ちゃんとした真田そばを再現して、「舌がひんまが」りたいと思います。
さて、次回の「鬼平めし」ですが、ドラマに毎回登場する軍鶏鍋屋「五鉄」の軍鶏鍋にしようかと思っています。今度こそ、しっかり料理をすることになるでしょう。とりあえず、軍鶏肉を手に入れないといけませんが。
では、今回はこの辺で・・・・あ、長谷川様から一言いただけるようです・・・
長谷川平蔵ラブなので、文句なし!
多分幅広めの10割そばなんじゃ無いですかねぇ。軍鶏期待してます!
なるほど、10割そばですね。次は10割そばとねずみ大根で再チャレンジします!
再現する為の努力が凄い😄
ありがとうございます。今回は十分に再現しきれず残念です
ものすごい洞察力と行動力に感動すらおぼえました!明日はおそばにします。
そう言っていただけると励みになります
いいっすね、このシリーズ!
そば食べたくなりました!
ぜひ大根おろしをたっぷり入れてお召し上がりください
神妙にupvoteしました!
楽しいシリーズです♪いつか例の「卵酒」もお願いします。
ありがとうございます!
卵抜きの卵酒でもいいですかw
えっ。。(笑)